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Top > Dialog > 【特別編01 】『Frost Flowers』を終えて │ 針山愛美/秋辺デボ

『Frost Flowers』を終えて
針山愛美/秋辺デボ

Dialog EX.01

HARIYAMA
EMI

バレエダンサー
一般社団法人イーアイアーツ代表理事
AwajiWorldBallet芸術監督

PRISM CO., LTD.

SHINTANI
NOBUYUKI

株式会社プリズム
代表取締役社長
新谷暢之

AKIBE
DEBO

アイヌ文化継承者/プロデューサー
秋辺デボ(秋辺日出男)

OVERVIEW

『さっぽろ雪まつり2024(第73回)』大通会場8丁目「雪のHTB広場」にて行われた、一夜限りのスペシャルコラボ・ダンスパフォーマンス『Frost Flowers』。このプロジェクトの翌日、興奮冷めやらぬ中、メインキャストの 針山愛美 さん、秋辺デボ さんのおふたりを迎えて行った対談企画。Dialog特別編としてお楽しみください。全3回です。

ゲストのご紹介〜はじめに

新谷:

今回は昨年に続き、北海道札幌市からお届けします。今回で74回目を迎える『さっぽろ雪まつり』大通り会場にて、プリズムがプロジェクションマッピングとスペシャルコラボステージの企画・プロデュースをしまして、昨年に引き続きHTBさんの全面協力のもと大通会場8丁目雪のHTB広場にて開催できました。

さて、昨日(2024/2/9)ステージが終わりましたのでそのお話をさせていただきたいと思います。プロジェクションマッピングですが、今年は3代目札幌駅舎(旧札幌停車場)が雪像として建てられました。(※現在の駅は5代目)
今回テーマを伺い、札幌市と北海道歴史文化財団さんにご理解・ご承諾いただきまして、世界中にある”駅”の物語をプロジェクションで描く『Station』を制作、ひとりの女性の人生をプロジェクションマッピングで描く作品を上映させていただきました。

今年のスペシャルコラボステージのテーマは『Frost Flowers』。まるで氷の上に咲くお花のような氷の結晶をタイトルのモチーフにしました。プロジェクションも女性を主人公にしましたので、今回はステージも女性をメインに、しなやかで力強い表現がつくれたらという思いがありました。また昨年同様に自然への畏怖、そして世界平和への祈りを込めたダンスコラボレーションにしたく、今年も特別なおふたりにご協力いただきました。

今回のステージのご感想、今後の展開を含めプリズムとのコラボについてもお話を伺いたいと思います。
まず、昨年もご依頼してお力添えいただきました、秋辺デボさん。今日はよろしくお願いします。

デボ:

よろしくお願いします。

新谷:

また、今回はアイヌ舞踊とバレエという組み合わせに挑戦してみようということで、世界的にご活躍されているバレエダンサーの針山愛美さんをお迎えしました。

針山:

本日はよろしくお願いします。

新谷:

プリズムは映像・技術で表現を行う会社ですが、プロジェクションマッピングにも照明や音響、素材が必要であったり、全体的な空間づくりやプロデュースなど手掛けるものが広がってきているんですね。

デボさんとはアイヌの歴史的な表現をどうみせていくかというところからご一緒していただきました。去年はケント(モリ)くんのダンスとのコラボにご出演、そして今回はアイヌとバレエのコラボをお願いしてみたんです。
個人的には、バレエには伝統的 / クラシックなイメージがありますが、新しいものを取り入れたいという愛美さん(針山)の様々な挑戦に対して、技術的なことが伝統的なものにどう融合していけるかの実験にこれまでプリズムがご一緒させていただいてきて、今回の企画が実現しました。

まず3人で何をやるかを阿寒で考えましたが、その時は例えばテンポだったり色々模索していたと思うんですけれども。実際やってみて、デボさんいかがでしたか?

デボ:

最初のイメージは、やっぱりクラシックバレエっていうイメージと、 バレエのなかにも新しいバレエもあるというのは認識していて、お話してるうちに、いろんなことできそうだなと思った。 でも、そこにアイヌがどうハマるのか、どんなコラボができるのかなという可能性ばかりで。確実につかみ取れるものは、実際ある程度練っていくまでは見えなかった。でも、無理だなとか、できないなっていう考えとか想像は一切なくて、絶対できる。で、やっぱアイヌの舞踊もダンスだからさ。人間が動く表現っていうのは共通言語だろうという自負もあったので、きっと合う、合わせられるという思いで準備を進めていたよね。

新谷:

今までバレエと合わせた経験は?

デボ:

俺はないな。でもうちのメンバーでもバレエ習ってた人いたから、実際相談もしてたしね。
どんな感じなのって。ただ、クラシックの音楽もそんなに変調するリズムとかあんまりないだろうと思ってたから、 アイヌのリズム感とかもちゃんとハマるだろうなっていう想像をしてたよね。

新谷:

僕はいろんなご縁をいただいてご一緒させてもらってるんですけど、アイヌだけではなく「伝統」があるなかで、新しいものとやっていく挑戦というのはありなんですかね?

デボ:

いつの時代も、新しいものの積み重ねが伝統になっていくと俺は思ってたんで、そういった点では針山さんと話したときに、過去に足を突っ込んで出てこない人ではないっていうのを知ってたから、絶対合うなって思ってた。

新谷:

僕も心のなかでは、おふたりは絶対に合うだろうなと思って阿寒に愛美さんをお連れしたんです。最初、愛美さんにアイヌ舞踊と一緒にやるのはどう?と聞いたところ「もう、ぜひぜひ!」とおっしゃってくださったので。
僕、アイヌコタンに行くと、いつもものすごく愛に包まれるんですよ。それを感じていただきたいのでコタンに行き、デボさんに会っていただきました。

針山:

30年くらい海外にいたので、お話をいただいた時に、アイヌの方とご一緒できる機会が生まれたことがまず信じられなかったんです。
おっしゃってくださったように、皆様がイメージしているバレエがどういうものかというのは一人ひとり違うと思うんですが、私のバレエってやっぱりまっしぐらなんですよね。

実際に阿寒に伺った時に感じたことは、空気感が本当に素晴らしいなと。
アイヌの踊りについて、私は知識不足というか、実際に見る機会もなかなかなかったのと、最初にお会いした時の印象は「わ、 全然違う踊りかもしれない」でしたが、それでもなにか共通するエネルギーを感じました。何ができるかはその場で決めてしまわなくても、現場の最後でなにか形になるというのはわかっていました。

阿寒湖を訪れた針山さん
新谷:

そうですよね。多分おふたりが意欲的にかたちにしようというエネルギーを発揮するだろうなという匂いというか…今回もすごく感じました。イコロシアターで愛美さんが出会ったアイヌ舞踊の方に踊りを教えてもらったりするのを見て、 何か今回もとんでもない化学変化が起きるかもとすごく感じました。

掴めない世界で踊る

デボ:

舞台ってステージがあってそこで踊ろうとするんだけども、人間が踊る時っていうのは、どうしても自然に山とか空気とか川とか海みたいのが背景に見えるんだよね。それはとっても美しく飾り立てられたステージにいても、動く人間にはちゃんと海の匂いがしてたり、 山の香りがしてたりして、そっからのパワーが1番強く感じるものであって。針山さんがね、それ持っててびっくりしたんだよね。ややもすると、こう平らな板で全部しつらえられたところでやっていても常に自然界の空気感をいつも背負って出てくるのがアイヌって強いなと思ってたんだけど、針山さんに会った時、 この人全部地球背負って来てるんだって(笑)プロジェクションマッピングって技術の塊が出てくるじゃない。でもそこで結局人間が表現したいものは、人間が求めてる自然界がどう出てくるかっていうことなんだよ。どんなに美しくつくったところでさ、人間の匂いしかしたくないんだよね。で、それが動いたり、ダンスになると、余計にそれがドーンと出る。昨日のステージでもそれが出てたなと、ひしひしと感じながらやってたよね。

針山:

私、幼い頃から自然が大好きで、自然の背景を感じながらというかそのインスピレーションから動きが出てくるんです。なので結局、スタジオの中で振り付けをしたものをそのままやるというのは違うなと。例えば雪が降ってきたらまたちょっと違う手の動き方になるとか、そういう感じなんですね。それを背景に、プロジェクションマッピングがどう入ってくるのかなって。昨日も肌で空気と自然のエネルギーを感じながらマッピングを見ながら…昨日は昨日しかない、本当に一瞬の出来事。

新谷:

“ライブ” で起きることというのは、その場その瞬間しか存在しなくて。
イベントはステージやセットを作って、公演をして、最後片付けてすべてなくなるのはわかってはいるんですけど、今回のステージは、水の塊でできているので最後全て溶けてなくなるんです。
人に”瞬間”で感じさせるパワー、参加していただいた方々の熱い思いがすごく伝わって、今回改めて演出づくりの原点に戻らせてくれました。

デボ:

氷も水も無くなる。もっとすごいのが、 プリズムがやってる「光」は掴めないじゃない。物体がないんだよ。溶けるどころかさ、 映してる瞬間瞬間、掴めないもので表現している。20世紀はモノが欲しくてしょうがなかったじゃん。
いいものがほしい、ステージもちゃんとしたいとか。今はそうじゃなくて、掴み取れないもので何かを表現していく。踏むこともできない、掴むこともできない。

アイヌ文様っていっぱいあるじゃない。あれはお尻に敷いちゃダメなのさ。だから座布団にアイヌ文様とかしないし、トイレカバーにもやらない。それはタブーなわけ。5年前だけど、うちの劇場でプロジェクションマッピングを導入して、アイヌ文様を床にいっぱいに映し出して、 そこで踊ろうってなって、準備もして、じゃあやろうとなった時、アイヌのメンバーが、 いやアイヌ文様を踏みながら踊るってのはどうかなと。やっぱり伝統的な考え方も大事だから。
そりゃそうだけど、もう21世紀なんだから、そろそろアイヌ文様も踏んづけていいんじゃねって俺は一瞬思ったのさ。そういう乱暴なとこあるから。
で、そこに先輩が来て、踏めるもんなら踏んでみろって踏んだんだよね。そしたら、映像だから文様を踏んだと思った途端にその文様は足の甲に映っていて、ここ(足の下)には絶対映ってないわけさ。踏めないのよ。

新谷:

おおーほんとだ。

デボ:

プロジェクションは光なので、どんなことをしても踏むこともできない。なのでアイヌの伝統的なタブーも解決した。
それでその時に、ああプロジェクションマッピングって掴めない世界が本当にあって、しかもそれが今一番の表現だと。ちょっと前だったら大道具小道具っていう物理的な固まりがあってそこで踊ったりとかしてたんだけど、今は映すだけで心で掴んでくれみたいな表現ができるところ。面白いな、この光ってやつは。

新谷:

いや、今のエピソードすごく面白いですね。なるほどと思いました。

デボ:

だから溶けてなくなる氷もそうだし、光もそうだし、我々掴めない世界で踊ってたんだよね。それが面白いね。

CONCLUSION

【01】はここまでとなります。

【02】はコチラ
【03】はコチラ
※全3回

動画はコチラから

Photo: 株式会社 BRONSON

THE FRIEND


Ballet Dancer

HARIYAMA EMI

バレエダンサー
一般社団法人イーアイアーツ代表理事
AwajiWorldBallet芸術監督

HISTORY

ボリショイバレエ学校を首席で卒業。モスクワ音楽劇場バレエ団、エッセンバレエ団(ドイツ)、米国バレエインターナショナル、クリーブランド・サンホセバレエ団、ボストンバレエ団でプリンシパルとして、ウラジーミル・マラーホフ率いるベルリン国立バレエ団で10年間活躍。レニングラード国立バレエに招かれ『白鳥の湖』と『ジゼル』に主演、大成功を収める。ウランウデ国立バレエ団で『白鳥の湖』と『ジゼル』に客演主演した際、大臣から表彰を受ける。モスクワ国際バレエコンクールで特別賞、ニューヨーク国際バレエコンクールで銅メダル(日本人初)、パリインターナショナルコンクール銀メダル

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