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Top > Dialog > 【特別編03 】『Frost Flowers』を終えて │ 針山愛美/秋辺デボ

『Frost Flowers』を終えて
針山愛美/秋辺デボ

Dialog EX.03

HARIYAMA
EMI

バレエダンサー
一般社団法人イーアイアーツ代表理事
AwajiWorldBallet芸術監督

PRISM CO., LTD.

SHINTANI
NOBUYUKI

株式会社プリズム
代表取締役社長
新谷暢之

AKIBE
DEBO

アイヌ文化継承者/プロデューサー
秋辺デボ(秋辺日出男)

OVERVIEW

『さっぽろ雪まつり2024(第73回)』大通会場8丁目「雪のHTB広場」にて行われた、一夜限りのスペシャルコラボ・ダンスパフォーマンス『Frost Flowers』。このプロジェクトの翌日、興奮冷めやらぬ中、メインキャストの 針山愛美 さん、秋辺デボ さんのおふたりを迎えて行った対談企画。Dialog特別編としてお楽しみください。全3回です。

窮屈があるから自由になれる

新谷:

イベントって実は様々な制限があるんですよね。そんな環境でやっていくなかで、ある一定の時期を通り越した時に、自由にやりたくなっちゃって。

雪まつりは、お客さんからお金をいただいていないフリーな環境なので、実力を試す場でしかない。それであれば、夕方のプロジェクションマッピングのショーが始まるギリギリ前の時間帯を、プロジェクションを使える状態で貸してくださいってお願いして。これも、僕らが繋がったご縁で一緒にやっていただけるアーティストの方に、彼らの表現を自由にしてもらうという可能性を確かめたかった。
演出やディレクションなどの「表現」の部分は、もうアーティスト同士のぶつかり合い、個人でやりたいことを、お客さんにはストレートに、素直に感じてほしいというコンセプトでやっているんです。それが結果的に自分にいろんなものを教えてくれる。新しい表現や新しいかたち、デボさんとも話した「その伝統っていつから始まったの?」みたいな話に繋がって。

針山:

10年弱前に所属していたベルリン国立バレエ団でも窮屈な部分があって。「表現」に関して、振り付けも公演日も決められていて踊る日々の良さもあるのですが、「自由な表現」は公演がない休みの日に限られてしまうんですよね。
退団後は自由にやれることに残りの時間とエネルギーをかけたいと感じていたので、今の言葉がずっしりと入ってきました。多分皆さん同じような感覚だから、こうやって集まっているのかも。

デボ:

アイヌの方は伝統舞踊という括りがあって、こういう風に踊るんだよっていうのを先祖とか先輩から教わる。ある意味窮屈。ところが、それを極めてからでないと自由になれないのさ。きちっと基本を身につけてない人が突然自由にやると、何にもないのよ。できない。
あなた(愛美さん)の仕事が昔は窮屈だったから、今自由にできるのはその窮屈があったからこそだろうなって今思ってる。俺もそう。こういう風に踊るものだよってきっちり覚えて覚えて、それから自由になると、ベースがちゃんとしてるから何をやってもぶれない舞台人ができる。窮屈って大事なんだなって思いつつ、感謝しつつ、好き勝手に今やっている。

針山:

そうですね。何でもしっかりした基本と型がないと、どういう風に表現するかがぶれますもんね。

新谷:

僕はその窮屈が、窮屈だと感じなくなるタイミングがありました。いつだろう…多分45歳を過ぎてから、ハードルに感じていたことも、楽しく思えるようになって。でも、プレッシャーから逃げたい自分も絶対的にある。けれど、ハードルを超えれば超えるほどちょっとずつ余裕が出てきて、逆になんだか面白そう、みたいなところに辿り着くには、経験と時間が必要なんだなと感じてます。

デボ:

結局、「その伝統っていつからはじまったの?」っていうのはわかんないけど、時間が経つとどこか硬直化するよね。 それが昨日みたいな舞台をやると、フッとこう、体の芯から本当に自由に羽ばたく瞬間がある。だからまた伝統に戻れる、というのがある。

針山:

伝統と基礎、しっかりしたものがあるから自由な表現までたどり着く。本当にそうですね。

舞台を終えて

新谷:

昨日のステージも正直言って演出はお任せ状態でやっていただいたんですけれども、愛美さんがトゥシューズを履いて瀕死の白鳥をやりましたよね。伝統的な演目をとんでもない環境でやっているという、なんとも不思議な瞬間でした。表現としての自由って何やってもいいわけじゃないですか。でも、あのステージは本当に雪だけでできているんですよね。中に台とかも何もないんですよ。完全に雪だけを削ってつくったステージで、さらにやる前にもちょっと雪が降ったり、その前には暖かくて少し溶けたりしてガタガタしているところに、トゥシューズで踊られた。ギリギリまで悩まれたと思いますけれども、最終的には愛美さんに判断を委ねました。

針山:

あれは感動的な体験でした。できる、できないという感覚もあるんですが、ただ、ひとつ心配したのは何回も練習できないじゃないですか。本番前に足にもし何かあったらという心配もあって、前日はステージの雪のコンディションがあまり良くなくて踊れなかったから結局本番での判断になったけれど、何もなかったら絶対にやるとは決めていたんです。結局踊った後は、もうこれ3回公演でもよかったと思ったくらい!

新谷:

へえー!ステージの条件も良かったのかもしれないですね。それでもガタガタでしたけど。

針山:

条件も良かったですし、ガタガタでも確実にできると思ってました。

新谷:

本当に失礼なんですが愛美さんと出会うまでは、僕クラシックバレエを真剣に見たことがなくて。バレエ自体、どう感じていいかも正直わからなかった。 でも、昨日はあの空間に完全に白鳥が見えていて、感じるものがあって、すごかった。だから「表現」は魂が入っていると伝わるものなのかもなと。

デボ:

いや、俺もそう思った。一昨日の練習の時の瀕死の白鳥を見てね、すごい人とやってんだな俺たちって。それでもっと驚いたのが、俺に演出させるんだよ。ここどうするんですかって。何言ってんだ、この大先生って(笑)

我々はこういう風に動くから、ここで自由にやってくださいっていうのが通用しないの。具体的に求めてくるから、しょうがねえな、じゃあここは片足で…それで立ち上がる前にちょっと腕動かしてからやってよ、と言ったら素直に聞くんだよね(笑)なんだかね、釈迦に説法なのかね。すごい人に俺はああせいこうせい言ってんだなと。いや、いいアーティストって素直なんだ、それは経験上わかってる。でもさ、他のクラシックの関係者が見たら、あの親父何やってんだって思うだろ(笑)

針山:

いやいやいやいや、逆ですよ!ご一緒させていただけるのに、アイヌの古典もあるなかでどこまで自由な表現をしても許される、プラス邪魔にならないかなという心配がありました。

新谷:

アイヌにとって踊りとは神への祈りだと。その「祈り」という表現は、今回やってみて愛美さんとデボさんにとってどうでしたか。

デボ:

祈ることっていうのは日常茶飯事なんだ、アイヌだから。山に入る時も祈ってから入るし、熊に遭わないように祈るし、家族に体調不良が出たら祈るし、ちゃんとした儀式をやってね。今日から1ヶ月海外に行くから道中の安全を祈るし…とか、そういう延長線上に踊りがあるという感覚なんだよね。だから、祈りイコール踊り、踊りイコール祈り。一つの身体なんだよね、踊りと祈りとが。そういう想いでみんなも俺も臨むから、今から踊るよって、ないねえ…長年やってるとそうなるよね。

針山:

はい、もう一部ですね。生活のなかの、生きてるなかの一部みたいな。

新谷:

今回ご協力いただいた方々にもものすごく楽しんでいただけましたし、やり続けていると周囲がどんどん協力的になってくるんですよね。共感してくれる人が増えるプロジェクトはすごくありがたいしやりがいがあって、やる意味が見出される。さらにそれが社会や時代に求められるものになり、こんなプロジェクトをやりたいという子たちがまた生まれて、新たなものをつくり出して…相乗効果や良い循環を、プリズムにも、広く社会にもつくりたいんですね。何か新しいものであったり魅力的なものに人は集まるので。
ですので、今後もぜひご一緒させていただきたいと思っています。
今回は僕も本当に興奮が止まず寝れず、んで朝寝坊する…みたいな状態でしたけど(笑)

針山:

本当に素晴らしい機会とご縁でした。

新谷:

あと、今年は本当に大勢の方々が観てくださって、大変な拍手喝采をいただきました。周りのご協力いただいた関係者の方々にもすごく感動いただけて、涙する方もいらっしゃって。その伝わってきた想いに、僕も大きなパワーをいただきました。

フィナーレの様子
デボ:

いつも俺は舞台の目指すところは「共感」。観ている人、踊る人、ステージに立つ者同士も共感して、観る人も巻き込めるよっていう。「共感」が一番大事だと持ってるから、まさにそういう人たちに出会えて。うん、いいステージってそうだよね。

針山:

「共感」ですね、本当に同じことを思います。伝える、感じる。心のこと。

新谷:

今回は本当にありがとうございました。今後もまた新しいプロジェクトをおふたりと一緒に考えてやってみたいと思っていますし、異なるジャンルの方、いろんな方々と新たな方向性を探っていくというのもやりたいと思っていますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。

デボ:

色々やろう。

針山:

スタートですね!

新谷:

それではまた、未来に向けてぜひご一緒させてください。本日は本当にありがとうございました。

CONCLUSION

【03】はここまでとなります。
ご覧いただきありがとうございました!

【01】はコチラ
【02】はコチラ
※全3回

動画はコチラから(coming soon)

Photo: 株式会社 BRONSON

THE FRIEND


Ballet Dancer

HARIYAMA EMI

バレエダンサー
一般社団法人イーアイアーツ代表理事
AwajiWorldBallet芸術監督

HISTORY

ボリショイバレエ学校を首席で卒業。モスクワ音楽劇場バレエ団、エッセンバレエ団(ドイツ)、米国バレエインターナショナル、クリーブランド・サンホセバレエ団、ボストンバレエ団でプリンシパルとして、ウラジーミル・マラーホフ率いるベルリン国立バレエ団で10年間活躍。レニングラード国立バレエに招かれ『白鳥の湖』と『ジゼル』に主演、大成功を収める。ウランウデ国立バレエ団で『白鳥の湖』と『ジゼル』に客演主演した際、大臣から表彰を受ける。モスクワ国際バレエコンクールで特別賞、ニューヨーク国際バレエコンクールで銅メダル(日本人初)、パリインターナショナルコンクール銀メダル

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